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「二楽亭へようこそ」その13 [小説]

第4章 その2

この小狐丸は平安時代にやんごとなきお方が、
刀鍛冶の三条宗近と
伏見稲荷の神霊に鍛えさせたという刀で、
刀身に狐の絵が彫ってあるのがかわいい。
その鍔(つば)に指をかけ、
鯉口を切る。
――と同時に、刀を寝かせて、
右に一回転しながら刀身を相手の胴へと叩き込む。
直後、左に旋刀してふたり目をなぎ倒しながら、
3人目には地面を刷り上げるようにして横腹を峰打ちで一閃する。
私が走り抜けた後、
鞘に刀を収めると同時に3人が倒れる。
(うーん、決まったっ!)
と思ってたら、
「結繪ちゃん、カッコイイって思ってますわね?」
と頭上がら声が降ってきた。
「音音――」
いつからそこで見ていたのか、
大ぶりのクヌギの枝の上から私の横に飛び降りてくる。
あ、スカートがまくれて、
レース使いの白の大人パンツが丸見えになった。
音音、エロい……。
音音ジャンプ.jpg
音音は、同い歳で、親戚で、幼なじみで、
この弾正府では、
弾正忠(だんじょうのちゅう)として私の補佐をしてくれてる。
沈着冷静で才色兼備な上に
私より胸が大きいのはちょっとずるいと思う…。
「あの方たち、
十中八九、遺伝子改造新型鬼化ウィルス、
つまりディアボロに感染してるはずなので、
科学部に回しときましたわ」
そう言われて振り向くと、3人の姿はもう無かった。
確かにディアボロに感染しているなら、
処置は早い方がいい。
なんといってもディアボロというタチの悪いウィルスは、
ワクチンがまだ完成していないんだから…。
ワクチンの開発ができるまでは、
感染者は低温体温療法による一種の仮死状態
=凍結処分にしておく以外に方法がない。
(それにしても音音って、
ホントやることにソツがない)
私と音音は同じ化野家の家系に連なっている。
彼女の家の方が本家筋で、
契約しているあやかしは、地狐の静葉さま。
本来ならば、容姿、能力、家柄とか、どれをとっても私より上な音音が、
弾正尹になるはずなんだけど、
子供の頃のちょっとした手違いで、
音音は私の補佐に回ることになった。
でも、音音はその方が性に合ってるて言ってくれて…。
音音になら安心して背中を預けられる。
なんて、ひとりで感慨にふけっていると、
二人の携帯が同時に鳴る。
「生徒会長から………、
やっと犯人の目星がついたみたいですわね」

第4章 その3につづく
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