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二楽亭へようこそ![されどバナナ、なれどバナナ」 その5 [小説]

管理人 桂木 萌です。
もうしわけありません。
間違えて6話を先に公開してしまいました。
こちらが第5話になります。

大船駅から14時台の特急踊り子号に乗り込んだ
オオゼキ以下3名は、
駅弁の名店・大船軒で鯵の押し寿司とカップ酒を買いこんで、
すっかり物見遊山を決めこんでいた。
「バナナをもらいに行くのに3人もいらんとは思うんだが、
ボックス席を自由席で気兼ねなく使うには最低3名は
必要だからなぁ…コクリュウ、アラマサ、お前らも食え食え」
押し寿司を包んでいる紐をぶちきると
びりびりとぞんざいに包装紙をやぶって
ふたりに差し出す。
「いただきます」
鯵に少ししょうゆをたらして食べ始めたふたりに、
カップ酒を渡そうとすると、
「オオゼキさん、さすがに勤務中に酒は…」
と言って受け取ろうとしない。
「…はいそうですか。じゃあいいよ、
俺だけでひとりさびしく宴会しますよ…」
すっかりへそ曲げモードにはいったオオゼキは
カップ酒を一機にあおって、
窓際に並べていたカップの日本酒を右から順に飲み干していく。
辻堂、茅ヶ崎、平塚を過ぎる間も飲み続け、
大磯に着いたころにはガーガーといびきをかいて眠ってしまった。
若い世代では酒離れが進むと言われるものの、
もともと酒好きな河童たちだけに、
まだ窓際に残っているカップ酒を見ているうちに我慢できなくなり、
コクリュウが手を出すと、アラマサもいっしょになって飲み始めた。
目的地のある熱川に付くころには、
3杯目も飲み終わり、
ふたりともすっかり出来上がっていたが、
熱川到着のアナウンスが流れるとさすがに任務を思い出し、
爆睡していたオオゼキを無理やり起こして、
乗り過ごすことなく、なんとか下車に成功した。
タクシーに乗り込み行き先を告げると、
「え? 歩いてすぐよ?」
とドライバーに言われるものの、
半分寝ているオオゼキを運ぶのが面倒で、
「とにかくバナナ食べたいんで、お願いします」
と言うとドライバーは、
「あっ!? バナナね!
じゃあ本園じゃなくて別園の方がいいね。承知しました」
と言って車を出した。
とはいえ別館もそれほど遠くは無く、
すぐにワナナバニ園に着いた一行は、
ワンメータ分の代金を支払うとタクシーを降りた。
大人3人分のチケットを購入し、
あてどなくバナナを探して歩き始めたものの、
順路通りに園内を歩いて行くと、
すぐにバナナがたくさん生えている温室に行き当たった。
「あっ、バナナってあんな風に反り返って生えるんですね」
「へー、俺も初めて見た」
コクリュウとアラマサが上を見上げて呆けていると、
「ひょおお! 危ないっ!」
と叫んだオオゼキがふたりをどついて突き飛ばすと、
自分はコンパクトに回転してなんとか受身をとることに成功した。
「な、なにするんですかっ!」
突き飛ばされれ怒ったふたりだったが、
瞬時に我に返った。
ふたりが居た場所には、刀身に十字架を刻んだナイフが突き立っていたのだ。

つづく

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