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「二楽亭へようこそ!」 ハワイ細腕繫盛記 その8 [小説]

さっそく準備にかかった音音は、
エディブルフラワーを買い付け、
甘味シロップに漬け込むと
先日の戦いでクラーク博士から手に入れた
細胞を壊さずに冷凍する技術=スーパーセルライブ製法で氷漬けにした。
ふわふわのかき氷とエディブルフラワーのコラボは
インスタ映えする商品に仕上がっていた。
「これは売れそうですっ!」
と喜ぶナドワたちに、
「写真を撮ってSNSで拡散してくださませ」
と口コミでの宣伝戦略に出る。
その他、
リノを先生にして、
河童ガードのクボタにフラを覚えさせたものの、
ちょっと地味な仕上がりになってしまい、
(リノは、不思議と荘厳な感じのするクボタのダンスは凄い、
と絶賛していたが)
急遽別のフラの先生に教授してもらったファイヤーダンスで、
炎出しまくりで派手な演出に加え、
撮影中に丁度噴火した(幸い人的物的被害はなし)キラウエアをバックにした
ハワイのローカルCMを、
早朝深夜の安い時間帯に大量に流し、
だんだんと評判になっていった。
結果、
新装開店したリノたちの店
「デンジャラス! ロシアン・カラマリボールマニア」は、
現地人や観光客が押し寄せ大繁盛し、
提携した「シェイブアイスマニア」の行列もさらに長くなった。
その為の雪使いをリノたちの一族からも出してもらう事で
雪ん子たちの仕事量も軽減されて、
双方2号店を合同で出そうという話まで進められていた。
そして思惑通り、
雪ンバたちの店には閑古鳥が鳴き、
収入の途絶えた雪ンバ一味が
そろそろしびれを切らして動き始める頃合いだった。

雪ンバ、
早い話が歳を経た雪女のことだが、
以前音音との<かき氷対決>に負けた腹いせにいろいろ悪事を働き、
幽世(かくりよ)の監獄に永久幽閉となっていたが、
隙をついて脱獄し、現世(うすしよ)に舞い戻っていた。
そして、
音音の経営する高級割烹「極氷」に大食い二人を乱入させるという悪事を働いた為、
怒った音音は、
ハワイ高級リゾート宿泊券を懸賞品として付けて指名手配したものの見つからなかった。
その時の懸賞品の旅行チケットを換金するのも手数料が勿体ないので
<シェイブアイスアマニア>出店視察も兼ねて
やって来たハワイ。
そこで食べたマズいシェイブアイスが、
まさか雪ンバがコンサルティングしたものだとは、
お釈迦さまでも知らぬ仏の……つくづく腐れ縁だと思う。
とはいえ、
ここで雪ンバを取り逃がしてはまた面倒なことになるので、
化野家私設警備部から出せる人員を呼び寄せようとした音音だったが、
あいにく大口のイベント警備の仕事が入っており、
今、手元にいるキザクラ、オオゼキ、クボタの他5名以外は出せないと
やんわりと断られてしまった。
「営業優先で結構ですわっ!」
と強がったものの、
大見得を切った手前、
ナドワたちに頼むのもバツが悪い上に勝手が分からない。
(現地の警備会社では、あやかしは手に余りますし…)
となやましく思っているところに、
スマホからメールの着信音が聞こえてきた。
開けてみれば、
警備会社を立ち上げたという
ボスネセンスキー鬼兵団の頭目タチアナ、
元はロシアの皇女大佐からの挨拶メールだった。
181219i1.jpg
(ああ! うってつけの人材がおりましたわ)
音音はニヤリとしたかと思うと、
自分のスカイプアドレスを記載して、
ご祝儀代わりに仕事をさしあげるから、
あなたもスカイプにアドレスを作って上記のアドレスに電話しなさい、
と書いて返信した。
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