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「二楽亭へようこそ!」 ハワイ細腕繫盛記 その1 [小説]

常夏の島ハワイの州都ホノルル。
ワイキキ海岸沿いの目抜き通りカラカウア通りの一本北にクヒオ通りはある。
その一番西、ホノルル動物園にほど近い場所にあるかき氷ショップに
日本人の行列が出来ていた。
「はい、お待ちどうさま! 7ドルですわ!」
180921i1.jpg
(第二契約者どもからドルを巻き上げに参りましたのに
日本人が相手では本末転倒ですわっ)
音音は表面の笑顔とは対照的に内心は、
苦虫をかみつぶしたような状況になっていた。
「音音さーんっ! 氷チェンジです。
お願いしますー!」
県立稲村ケ崎高校からゲストで招いたはずの桂木萌までもがお店で立ち働き、
音音に氷を追加を依頼してきた。
「はいはい、わかりましたわ。
ちょっと行って参りますとも…」
この場合の氷というのは、
雪女の里から連れてきた雪女のことで、
近くに借りているコンドミニアムで待機中の子たちと
入れ替えないといけない。
ところが、雪女たちは英語をしゃべれない上に、
洋服が恥ずかしいようで浴衣を脱ごうとしない。
結果、
ひとりで歩かせると着物好きのいわゆるガイジンに炎天下で捕まって、
暑さでダウンしてしまうという事故がつづいたため、
音音が一緒にいて、
話しかけてくる連中からガードする必要に迫られていた。
仕方なく、
店舗兼住宅になるビルを探しているものの、
家賃の高いホノルルでは
なかなか好物件が見つからないので
ほとほとこまっていた。
「高いとは聞いてたけど、
お家賃がこれ程とは思わなかったのですわ…」

第二契約者たちとの闘いで結界が解け、
呪術的な鎖国状態が終わりをつげた日ノ本。
鎌倉府で起こる怪異を取り締まる弾正台のナンバー2・化野音音は、
副業で営む外食チェーン・道楽グループを
容赦なく押し寄せるグローバル化の波から、
いかに防衛するかに頭を悩ませていた。
「敵を知り己を知れば百戦あやうからずですわ」
つい最近孫子の映像作品を見て、
孫子の兵法にかぶれている音音は、
さっそく敵地の視察に行くことにし、
その地に選ばれたのは、
日系人も多く、同じモンゴロイドの多いハワイだった。
もし可能であれば、
現地の妖(あやかし)か精霊使いと接触し、
あわよくば第二契約者たちと共闘関係を構築したいという思惑もあった。
そんなハワイで食べたかき氷のあまりの酷さに、
『ウチのかき氷ならバカ売れする!』
とひらめいた音音。
(ハワイを皮切りに、
全米チェーンを展開して…うふ、うふふ…)
と取らぬ狸の皮算用を展開し、
「シェイブアイスマニア」第1号店をハワイでテスト出店した結果が
現在の状況というわけだった。

その1 おわり
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