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「ニ楽亭へようこそ」されどバナナなれどバナナ その9 [小説]

第9話

「オオゼキはまだ?」
「まだ、連絡が取れません。
クボタたちを捜索に出してるんですが…」
糖度20オーバーするバナナ・雨林23号を入手したという連絡のあと、
熱海から、国道134号線沿いに増援を--と
言って寄越したきり、
予定時刻を過ぎても小田原に現れず、
消息が不明になっていた。
化野家の私兵・河童ガードのほとんどを、
海沿いの134号線に動員していたが、
今日、土曜日の12時を回ってもその行方は知れず、
会場のキッチンスタジアムでは、
道楽チェーン側スタッフのイライラが募っていた。
「こうなったら、
確保してある普通の品種でやるしか…」
焦れる桜花に音音は、
「まあ、待ちなさい。
桜花、あなたがそれでは、
みなが浮き足だちますわ」
と他には聞こえないように諭した。
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「待てば海路の日和ありと
いうではありませんか?」
音音が言い終わると同時にキッチンスタジアム入り口の扉が開き、
弾正府の面々がオオゼキの帰還を期待して顔を向けるが、
そこに居たのはクラーク博士で、
スタッフ全員ががっくりと肩を落とす。
「ごきげんよう、諸君。
今日はせいぜい頑張って
おいしいデザートをお願いしますよ」
スタッフの落胆など気にすることなく、
そう言ったクラーク博士は、音音の隣のゲスト席に着いた。
すでに200人が収容できる観客席はほぼ埋まり、
1時になるのを今かと待ち構えている。
『みなさま、お待たせしております。
まもなくスタート時間になりますが、
その前に、本日の審査員をみなさまのなかから、
19人をランダムで選ばせていただきます。
これから、
入り口で渡された整理券の番号を読み上げますので、
呼ばれましたら、段上までおいでください』
番号が読み上げられ、
呼ばれた観客がスタジアム脇にある審査員席に座っていく。
時間が押し迫ってくるに従い、
道楽チェーン側のスタッフの焦りが募り、
「チーフ、そろそろ搬入しないと…」
「わかってる! 
もう少し、もう少し待って」
音音がオオゼキの帰還を信じて動かない限り、
配下である桜花が勝手に動くわけにはいかない。
『開始3分前』
「落ち着くのです。
オオゼキが持ち帰るバナナなしには勝ち目はないのですわ。
バナナを手に入れたのは間違いない。
オオザキは必ずやってくるのですわ!」
そう音音が見栄を切ったと同時に、
「お、お待たせしましたー!
オオゼキ以下2名、
雨林23号をお届けに参上ッ!!」
というオオゼキの声がスタジアムに響き渡った。
「でかしましたわ! 
さあさっそく準備にかかるのですわ!」

つづく
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