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「二楽亭へようこそ!」 ハワイ細腕繫盛記 その4 [小説]

翌日、昨日の地震のときの対応がSNSで拡散した結果、
「シェイブアイスマニア」は、
開店前から行列ができはじめ、
開店直前には昨日以上の行列ができていた。
音音は、
ナドワと例の少女を,、
自分付きのSP=河童ガードに探しに行かせるつもりだったが、
店の行列整理と警備に回さざるを得ず、
自分ひとりで探しに出かけることにした。
(このままでは本当に雪女の子たちが参ってしまいますわ)
手かがりといえば、
昨日キザクラが見失ったのがダウンタウンだということぐらい。
(とりあえず東に行ってみましょう)
クレジットカードを提示すればタダで乗れるトロリーバスを使って
ダウンタウンのそばまで行くことにした音音。
こっちの方が地価が低いので、
新たな店舗探しも兼ねている。
ハワイ政庁前でトロリーを降り、
ダウンタウンへ入って行くと
あちこちの店舗から
おいしそうな匂いが立ち上っている。
そこそこ行列を作っている店もあり、
観光客もそこそこいるものの、
地元の人だと思われる人が多い。
(いいですわ! こちらなら地元のアメリカ人から
ドルを獲得することができますわ!)
費用対効果の面から見ても、
ある程度の店舗を借りても採算が盗れそうだと踏んでニンマリする音音。
その目の端に鳥の羽が目に入った。
(あれは…どこかで…そうだ! ナドワの髪飾り…)
そう思い至って彼女が入ったと思われる路地へと駆け込んでみると、
ナドワらしき後ろ姿があるお店に入るところが辛うじて見られた。
近寄ってみると、
看板には、
<ホノルルタコヤキ Honolulu TAKOYAKI!>
と店名が神社の千社札とかで使う、
勘亭流っぽい書体でデカデカと書いてあるお店だった。
(た、タコヤキ…??)
アメリカ人って蛸食べるのでしょうか? と疑問に思いながら、
お店の中に入ると、
中にナドワの姿はなく、タコヤキの匂いが漂っていた。
「イラッシャーイ! 何ニシマスカー?」
と鉄板の前でタコヤキを焼いている女の子が日本語で聞いてきたので、
ぱっと壁のお品書きを見たものの、
いろいろ書いてあって目が上滑りした音音。
「じゃ、普通の…スタンダードなのを…」
と無難に答えて、彼女の作るのを見ていたが、
まとめて丸くしようとしているものの、
ぐちゃぐちゃとなるばかりでなかなか丸くならない。
(これは…)
「ちょっと変わってくださいまし」
と言って、女の子を強引にどかすと、
ぐちゃぐちゃになっているひとつひとつをくるくると回して
丸い穴のなかに収めていく。
181012j1.jpg
「OH! Miracle! Fantastic!」
と目を丸くしている女の子に、
「これが出来なくて,
よく焼き子を任されてますわねぇ?」
とため息交じりに呟きながら、
出来上がった分を経木のお皿に盛っていると
事務所から出てきたのは昨日ナドワと一緒にいた女の子だった。
一瞬何が起こっているのか分からなかったものの、
ちゃんとタコヤキが出来ているのを見て、
「コレ Can you make?」
と聞いてきた。
音音が竹串でひとつ突き刺して彼女の口にいれると、
メチャクチャ熱かったようで、
はふはふしながらなんとか食べきって一言、
「ヤミーっ!」
と叫んだ。

つづく
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