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「二楽亭へようこそ!」 ハワイ細腕繫盛記 その6 [小説]

「それは…ちょっと言いづらいのですが、
私たち本土のネイティブと違い、
リノたちハワイアンの精霊使いたちはちょっとマネーに不自由してます…」
「それでタコヤキ?」
「はい、リノに私が日本で食べたタコヤキが美味しいという話をしたら、
動画サイトで作り方見てハマって…」
「それだけでタコヤキを? …無茶ですわ…」
(あ…でも、ここで恩を売っておけば…)
そう判断した音音は、
「いえ、わたくしでできることなら協力させていただきますわ」
といかにも謙虚に聞こえるように答えた。
「本当に? うれしいっ! 音音、ありがとうっ」
それまで蚊帳の外に置かれていたリノが、
音音の手を両手で取ると激しくシェイクしてくる。
181117j1.jpg
そんなリノの目を見つめながら、
音音はちょっとした心配の種、
ハワイでタコって食材は大丈夫なのかを聞いてみた。
「ネイティブは食べますし、
観光客も食べれば大丈夫だと思うのですが…」
この自信のない返答…タコといえば、
デビルフィッシュとして食べない人もいる食材だけに不安が残る。
それにただのタコヤキではインパクトが足りない。
しかもここ数年世界的不漁で単価が上がっているのも問題だ。
そこで、
「タコではなく、イカを使ってはどうでしょうか?」
「カラマリですか?」
「そう、カラマリボールですわ。
カラマリでしたら皆さんお好きでしょ?
その中の一つにタバスコをたっぷりいれてスペシャルホットボールにする…
名付けて『ロシアンカラマリボール』ですわ!」
「味は大丈夫なの…?」
不安そうに聞いてくるナドワに、
「もちろん大丈夫ですわ。お好み焼きってご存知?」
「あ、はいっ…そうかっ!」
「そう。カラマリはタコヤキと同じ粉もののお好み焼きのメジャーな具材ですわ」
「おー! グレイト!」
「それと我が化野道楽グループの<シェイブアイスマニア>と提携しましょう!」
「えっ あのシェイブアイスマニアって化野サンのお店だったんですか?」
先日の地震の後のホスピタリティで有名になったおかげで、
そのあとの話はとんとん拍子に進み、
リノのタコヤキ…いやカラマリボール屋は
<デンジャラス! ロシアン・カラマリボールマニア>
として再スタートすることで合意した。
「そこで相談なのですが、
じつはハワイの暑さのせいで、
氷を作っている雪女たちがバテてしまって…。
ハワイの女神ポリアフの眷属の精霊に
冷たい部屋を作ってもらうことはできでしょうか?」
音音がそう言うと、
二人の表情が目に見えて曇った。
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