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「二楽亭へようこそ!」 ハワイ細腕繫盛記 その2 [小説]

出店に際して、
音音は配下の雪女たちに、
かき氷用の特上雪を用意させていたが、
結果炎天下のハワイでは、
雪女たちの体力にもおのずと限界が訪れつつあった。
(あのシェイブアイスを喜んで食べてるようなアメリカ人ならともかく、
日本人相手だと氷で手を抜いた途端、
<味が落ちた>だの<ブランドに胡座をかいた殿様商売>だの
SNSに書きまくられて、
鎌倉の本店まで炎上しかねないのですわっ)
音音は、経営する<道楽チェーングループ>の
最高級割烹<極氷>への影響を考えると、
市販の氷を混ぜられない。
とは言え、
このままでは雪女たちの体調が心配なので、
なんとか手を打ちたいと思っているものの妙案は浮かばず…。
そんなことを考えながら歩いていると、
反対側の道路を見覚えのある女の子が
現地人の女の子といっしょに歩いているのに気がついた。
180925j1.jpg
(あれはアメリカンネィティブのヘビ使いナドワ…。
隣の方は…少し結絵ちゃんに似てますわ…やはり精霊使いでしょうか…)
歳のころはナドワと同じ17歳ぐらい、
日本にいる幼馴染であり、
弾正台では音音の上司にあたる弾正尹(だんじょうのかみ)・那須野結絵に似た美少女。
ハワイの伝統衣装ムームーに花冠という出で立ちで
隣のナドワがアメリカンネイティブの衣装なだけに
ふたりでいると相当目立つ筈なのだが、
すれ違う人が振り返ったりすることはない。
陰形(おんぎょう)法の様な姿を目立たなくする呪法を使っている証拠だ。
音音が指をぱちんとならすと、
背後から、長めの茶髪を後ろに結び、
アロハを着た長身の男がすっと近寄っていく。
「どうしやした?」
見た目の麗しさとはうらはらに伝法(でんぽう)な口をきくのは、
化野家を守る河童ガード筆頭キザクラだった。
「今すれ違ったナドワともうひとりの子の行き先をつきとめて」
「承知しました」
そう返事した男は忽然(こつぜん)と姿を消した。
 その2 おわり
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