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あけましておめでとうございます♪ [小説]

あけましておめでとうございます。
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今年もよろしくお願いするのです♪
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「二楽亭へようこそ」インデックス [小説]

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久世ねえさまの書き下ろし学園伝奇小説
「二楽亭へようこそ」の連載スタートなのです。
久世ねえさま、
「ブログは苦手…」と言うことで、
ページの管理は私、桂木 萌が行っているのです。
(私のブログはこちら
「毎日更新! メイド式 萌株レヴュー」http://moe-moe.blog.so-net.ne.jp/
「感想やリクエストなどいただけるとうれしい…」
と、久世ねえさまも申しております。
2次やスピンオフなども大歓迎なのです。
よろしくお願いするのです♪

第1話 「凍結する西御門 襲来! 第2契約者」
第1章 その1 その2

第2章 その1 その2 その3 その4

第3章 その1 その2 その3 その4 その5

第4章 その1 その2 その3 その4 その5 その6

第5章 その1 その2 その3

第6章 その1 その2 その3 その4

第7章 その1 その2 第1話おしまい

第2話 「酒 虫」 
その1 その2 その3 その4  第2話おしまい

第3話 「瑞葉が来た日」
その1 その2 その3 その4 その5 その6 第3話おしまい

第4話 「付喪神といっしょに」
その1 その2 その3 その4 その5 第4話おしまい

第5話「ビーチバレーボール大会」
前編 後編

第6話「暗闘--青木ヶ原樹海--」
第1章 第2章
第3章 その1 その2 その3 その4 その5 その6
第4章 その1 その2 その3 その4 その5 第6話おしまい

第7話 「決戦前夜」
第1章 その1 その2 その3 その4 その5 その6 
第2章 その1 その2 その3 その4 第2章 おしまい

第8話 「二楽亭へようこそ!」
第一章 鎌倉攻防戦 その1 その2 その3 その4 その5 その6 その7 その8 その9 その10 その11 その12 その13 その14 その15 その16 その17 その18 その19 その20 最終回

登場人物紹介
http://niraku.blog.so-net.ne.jp/2010-02-28

特別編 その1 インタビュー ウイズ隠神刑部(いぬがみ ぎょうぶ)
特別編 その2 インタビュー ウイズ化野音音(あだしのねね)
特別編 その3 インタビューウイズ タチアナ・ニコラエヴナ・ロマノヴァ



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登場人物紹介(途中)>< [小説]

結音.jpg葛静改.jpg
結.JPG
弾正尹 那須野結繪
(だんじょうのかみ なすのゆえ)
鎌倉府立西御門学園1年生。
異界との特異点が存在する
朝廷直轄の鎌倉府の治安維持のため、
学園内に設けられた弾正府の筆頭。
暫馬刀を操る狼部など
十三部集と呼ばれる対妖(あやかし)用
武装組織を配下に持つ。
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弾正忠 化野音音
(だんじょうのちゅう あだしのねね)
弾正府ナンバー2。
代々、本家筋の化野家から弾正尹を排出していたが、
当代は結繪のサポートに回ることになった。
子供時代のある出来事がきっかけで
「結繪はオレの嫁」と固く心に誓っている。
葛.JPG
有明葛葉
(ありあけくずは)
五本の尾を持つ狐の化精。
砕かれた殺生石の欠片から生まれた
白面金毛九尾の狐玉藻御前の娘。
上総国の住人有明大所(ありあけだいしょ)に拾われる。
人との共存を願い、弾正台に招聘(しょうへい)され、
名刀小狐丸に封ぜられる。
以後、代々弾正尹を守護。
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阿部静葉
(あべしずは)
四本の尾を持つ狐の化精。
砕かれた殺生石の欠片から生まれた
白面金毛九尾の狐玉藻御前の娘で葛葉の妹。
鎌倉山内の住人で安倍有世の庶子阿部有泰に拾われ、
土御門家との関係を強める。
弾正府へ招聘され、姉葛葉と出会い、
名刀狐ガ崎に封ぜられる。
以後、弾正尹を補佐する弾正忠を守護。
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桂木少尉萌
(かつらぎのしょういもえ)
県立稲村ヶ崎高等学校1年生。
民主武家政権により弾正府監視のために
高校内にもうけられた検非違使へ配属された。
普段は大人しいが切れると見境がないため
「稲村のアンバランスサーカス」の異名を持つ。

桂木瑞葉
(かつらぎみずは)
一本の尾を持つ狐の化精。
砕かれた殺生石の欠片から生まれた
白面金毛九尾の狐玉藻御前の娘で葛葉と静葉の妹。
欠片の大きさが充分でなかったため、先日顕現したばかりだが、
怨霊の実体化を簡単にこなしてみせるなど、ポテンシャルは高い。
現在、修行を兼ねて、検非違使・桂木萌の元で生活中。

十三部集
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鳩部司・宮本鳩太郎
(きゅうぶのつかさ・みやもときゅうたろう)
西御門学園3年生。
生徒会長として生徒会を率いる弾正府の頭脳。


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狼部・三峰一子
(ろうぶ・みつみねいちこ)
西御門学園2年生。三峰家長女。
女子剣道部主将。公正無私な優しいおねえさん。

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牛部司・大黒璃緒
(うしのべのつかさ・おおぐろりお)
相撲部を率いる巨乳美人なメガネっ娘。 


蜂部司・二荒大己
(ほうぶのつかさ・ふたらたいき)
槍術部を率いる運動神経抜群のツンデレ少女。

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大原鬼裂丸          
(おおはらきさきまる)    
伯耆(ほうき)の国の刀工大原安綱(やすつな)が作り出した刀の精。
妹・殺鬼丸とともに、鶴ケ岡宝物館に所蔵されていた。
派手好きだが、ポーカーフェイスで交渉上手。

大原殺鬼丸
(おおはらさつきまる)
伯耆(ほうき)の国の刀工大原安綱(やすつな)が作り出した刀の精。
渡辺綱が京都・一条戻橋で鬼・茨木童子の腕を斬った鬼切は末の妹。
地味で姉の影に隠れることが多いが、切れ味は姉鬼裂を上回る。
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いよいよ開幕なのです「二楽亭へようこそ」その1♪ [小説]

お正月に予告した
久世ねえさまの書き下ろし学園伝奇小説
「二楽亭へようこそ」の連載スタートなのです。
久世ねえさま、
「ブログは苦手…」と言うことで、
ページの管理は私、桂木 萌が行っているのです。
「感想やリクエストなどいただけるとうれしい…」
と、久世ねえさまも申しております。
よろしくお願いするのです♪

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序章

『むかしむかし、那須野というところに、
立ち昇る瘴気(しょうき)で近づくものを殺してしまう
殺生石という石がありました。
もともとその石は、
かの昔、朝廷に悪事をなした
九尾の狐・玉藻(たまも)の前が退治されたときにできたものでした。
その殺生石の話を聞いた、ときの帝が
僧・玄翁(げんのう)を遣わし、
殺生石を砕かせ、
それ以降、瘴気で生き物が死ぬことはなくなったといいます----』
これが普通知られている、
九尾の狐・玉藻の前と殺生石のお話。
だけど、そのお話には続きがあって…。

第一話 「凍結する西御門 襲来! 第二契約者」
第一章

紹和20年3月31日――。

『――大本営発表。硫黄島守備隊ヨリ、
戦局ツヒニ最後ノ関頭ニ直面シ、
本日夜半ヲ期シ、最高指導官ヲ陣頭ニ
皇国ノ必勝ト安泰トヲ祈念シツツ、
全員壮烈ナル総攻撃ヲ敢行ス、
トノ打電アリ。
通爾後、硫黄島守備隊ヨリノ通信ハ絶エ……』
薄暗い部屋に、
ザザッというノイズ混じりのラジオからの声が、
日本の苦しい戦況を伝えている。
ゆらゆらと揺れる、部屋の四方に灯る百目ろうそくの光のなか、
平安時代の貴族のような束帯(そくたい)姿の男達が
ボソボソと会話を続けている。
「硫黄島も落ちたか」
「此度は、第二契約者どもの思惑に、
大和人がのせられた格好だが…」
「のらずとも、唯一の神を押し立てて、
ごり押しで乗り込んで来ていたであろうよ」
口の端に皮肉な笑みを、
扇で隠すようにしながら男は話しを続ける。
「このあとは、米軍の動きに呼応して、
日ノ本に入り込んでいる契約者の先兵どもが、
鎌倉府を攻めるでしょうなぁ」
「現世(うつしよ)はいたしかたなし…。
人間世界を盾に幽世(かくりよ)を死守し、
何時の日か、日ノ本の精神を復興すべし」
「結局は“鎖国”しかあるまい…」
男たちは目配せして頷きあうと、
ゆらゆらと立ち上がりながら足元から消えはじめる。
「ことは決した…」
「ではこの後は、現世の世事は狐の姫たちにおまかせしましょうぞ」
「しましょうぞ…」
それを合図に、ろうそくの灯りがスッと消え、
部屋は闇に閉ざされる。


同年同日・鎌倉・西御門――。
うちっぱなしのコンクリートの部屋には
通信機器が多数備え付けてある。
その機器の前に座るオペレーターたちは、
詰襟(つめえり)の学生服と、
セーラー服を着た高校生の男女。
彼らはひっきりなしに入る通信への対応に追われている。
その中の一人が、
はじかれたように立ち上がると、
振り向いて声を張り上げる。
「申し上げますっ! 
い、稲村ヶ崎最終結界が突破されましたっ!!!」
「何っ! ば、ばかな…。新田義貞に破られて以来、
強化し続けてきた結界だぞっ!」
部屋の中に動揺が走る。
「極楽寺に展開中の部隊を長谷寺まで下げろ!」
すかさずそう指示を出し、動揺を抑えたのは、
大きな兵棋(へいき)演習用の机の前に立っている
白い学ランを着た学生たちだった。
しかしそのあとも、
状況の悪化を知らせる情報が続々ともたらされる。
「坂ノ下、鷲部司(わしのべのつかさ)
鷲観(わしみ)伝十郎様お討ち死! 
鷲部も被害甚大です!」
「狼部(ろうぶ)はどうしたっ!?」
「下馬四ツに部隊再集結中です。
現在、狼部司(ろうぶのつかさ)
三峯弦一狼(みつみねげんいちろう)殿のみ、
湘南海岸道路より坂の下へ先行中!」
「頼むぞ、弦一狼…」
白い学ランを着た中で、
ただひとり学帽をかぶっていた学生が、
机上の地図を睨みながらつぶやいた。

その2に続く。
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「ニ楽亭へようこそ」その2 [小説]

鎌倉の海沿いは、
東西に湘南海岸道路が走っている。
その道を西の稲村ヶ崎から東の由比ヶ浜に向かって、
金髪碧眼の大男が悠然と歩いている。
その前に立ちはだかったのは、
どう見ても女子高生と巫女という風情の、
ふたりの女性だった。
「これはこれは、
西御門(にしみかど)弾正府を統べる
弾正尹(たんじょうのかみ)
化野(あだしの)美沙どの。
ご機嫌よろしゅう。
葛葉どのも、いい加減良いお歳でしょうが、
相変わらず見目麗しい。
このアレクサンダー・フォン・シーボルトの血も騒ぎますぞ」
「淑女に年齢の話をなさるとは、
とても紳士の所業とは思えないのです!」
葛葉と呼ばれた女性が憤慨した様子でいなす。
巫女服に身を包んだ彼女の頭部には、
まるで狐のような、
先端が白く、
その他の部分が茶色地の、
けものの耳が生えている。
そして、耳と同じような色合いで、
五つに分かれている、
こちらもまるで狐の尾のような、
りっぱなしっぽも生えていて、
左右にゆっくりと揺れている。
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『良い歳』と言われていた彼女だが、
せいぜい20歳ぐらいにしかみえない。
その隣にいるさらに歳若な、美沙と呼ばれた、
ショートカットにセーラー服の少女が、
ため息混じりにつぶやく。
「まったく、懲りない連中だね。
この前この国に、
おまえの父親がちょっかいけかてから何年たつんだ?
もう120年か…。
あんときゃ、将軍(だんな)が上手いことあしらって、
なにもかも不問にしてやったっていうのにさ。
いい加減、あきらめてもよさそうなものを…」
「ご冗談を。我ら貴族信徒は、
主の為であれば、
喜んで命を投げ出しますぞ。
もちろん平民とて同様」
シーボルトが、パチッと指を鳴らすと、
彼の影の中から、
無数の影がわき出してくる。
「外務卿・井上 馨(かおる)殿の特別秘書を足がかりに、
この極東の地にて、
我が教団の礎にならんと志して、百数十年。
そろそろ我が肉体にも限界を感じましてな。
一族を引き連れて、
弾正尹どのに挨拶にまかりこしましたしだいです」
「第3契約者との折り合いが悪いからって、
この日ノ本を世界制覇の足がかりにしようったって
そうはいかないんだよっ!!!」
美しい少女の面影からは
想像もつかない荒々しい言葉が、
美沙の口をついて出る。
それを聞いたシーボルトがニヤリとしながら話し始める。
「あなたを守護する金狐・葛葉殿とて、
いにしえの<傾国>の末裔(まつえい)。
人の味を一度覚えたら最後、
我らに同心してくださるのは…」
そこへ、すさまじいスピードで黒い影が飛来したかと思うと、
シーボルトの配下を打ち倒していく。
「美沙様、葛葉様! 遅参いたしました! 
三峯弦一狼、ただ今推参!!」
そう叫んだのは学生服を着た小柄な青年。
彼は自分の背丈よりも長い日本刀
=六尺斬馬刀を軽々と振り回しながら、
敵を切り刻んでいく。
「お、おのれっ!! 狼風情が邪魔だてするかっ!!!」
部下を打ち倒され、シーボルトがうめく。
「ご苦労さまです~」
「弦一狼、ぬかるんじゃないよ!」
「承知!」
三人は声を掛け合うと、
シーボルトを目指して突進し、そして辺りは光に包まれ――。

第1章終わり
その3(第2章 その1)につづきます♪
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「二楽亭へようこそ」その3 [小説]

第二章 その1

20××年――。
多くの古刹や由緒ある神社が点在し、
関東の小京都といわれる古都鎌倉。
歴史のある街だけに、
曰く付きな場所は沢山ある。
ところがそんな場所以外でも、
幽霊やあやかしを見たとか、
不思議な現象が起きたとか、
そんな噂は日常茶飯事で引きもきらないし、
また実際に怪現象はおきる。
だけど、歴史があるから怪異が起こるわけじゃないの。
そんな現象の原因は、
政府の直轄領・鎌倉府の北東部
=丑虎(うしとら)に位置する
西御門という場所近くに、
異界に通じる入り口があるのが原因。
でもこれは、
普通の人にはほとんど知られてなくて…。

幼稚舎から大学までの
一貫教育で知られる
神奈川県鎌倉府立西御門学園――。
その中央に位置する高等部の建物は
今時珍しい木造の建築物。
お昼を告げるチャイムが鳴り、
授業を切り上げて先生が出て行った。
幼なじみで従姉妹で親友でクラスメイトの
化野音音(あだしのねね)が、
いっしょにお昼を食べようと、
お弁当を持って私の机のほうへやってくる。
音音は、身長は150センチぐらい。
柔らかそうな髪をてっぺんでまとめいる。
同性の私から見ても、かわいいと思う。
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(イラスト ムシ長者さん)
(これで変な趣味さえなければ言うことないんだけど…)
何となくそんなことを思って
苦笑する私に、
「どうかなさいまして?」
と聞いてくる。
「何となく笑いたかっただけ」
私がそう答える間に、
音音は、私の前に座っている子に席を替わって貰うと
その席に腰かけた。
「そういう気分のときもありますわね」
私の答えに納得したのか、
音音はお弁当の包みを開きはじめる。

音音と
たわいもない話しをしながら、
お弁当を食べていると、
<♪ちゃららん>
と、携帯メールの着信音。音音のだ。
ほぼ同時に私のにも着信音が鳴った。
<♪ちゃるるん>
私が携帯を開く横で、
一足さきにメールを見終わった音音が、
「結繪ちゃん、
マリーちゃんの家がまた建てられたらしいですわ」
「えぇ? またぁ?」
私のメールもおんなじ内容たった。
音音のメールも私のメールも、
発信源は、
いまや鎌倉府の住民の
必需アイテムになりつつある
同じ鎌倉府防災メール。
鎌倉府の怪異に備えて、
事件などが起きれば直ちに
配信されてくるようになってる。
“マリーちゃんの家”といえば、
確か私が小学校のころから、
合計3回は建てられてると思う。
有名な都市伝説だから、知ってるも多いと思うけど、
魔法を使うことで有名なマリーちゃんの家が、
鎌倉府の山の上にひっそりと立っているという噂話。
じつはあれ、都市伝説じゃなくて、
ホントに時々建つ。
「まだ、こんな古くさい手を使うヤツがいるなんて驚きですわ」
「でもほっとけないし…放課後行く?」
「みんな忙しいから、仕方ないですわね」
鎌倉のジモティなら、
こんなモノには引っかからないけど、
観光客とかが
時々現地に見に行っちゃうから
少し心配なんだよね。
なんで私がこんな心配してるのかというと、
ウチの学園はちょっと特殊な事情があって、
これまたちょっと特殊な自治体鎌倉府の
神霊・あやかし関係の警察業務を行う弾正府を兼ねてる。
私と音音も弾正府の一員なので、
こういう事件があれば、
対応しないといけないんだけど…。
でも、立ち入り禁止表示テープは張り巡らしたって
メールに書いてあったから、
平日で観光客も少ないことだし、
あと3時間ぐらいは大丈夫でしょ?
授業が終わってから急いでいけばいいよね。

……なんて考えていた私たちが甘かったみたい…。

その4に続く
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「二楽亭へようこそ」その4 [小説]

第2章 その2

私と音音は授業を終えたあと、
護衛がわりに、
幼なじみの同級生・
三峯三狼(みつみねさぶろう)を伴って校門を出た。
雪ノ下から大町、材木座へ抜け、
幽霊トンネルの異名を持つ
名越トンネルを通って、
途中で厨子マリーナに続く道に曲がる。
情報では、
その道の東側の小高い山の上に
マリーちゃんの家があるという。
ハイキングコースのような
舗装のされていない道へと足を踏み入れる。
途中で三狼が、
「人の匂いがする」
と、辺りの空気を嗅ぎながら言った。
三狼の鼻が利くのは折り紙つきなので、
誰かが入り込んだ可能性が高い…。
現場に急いだものの、
そこに着いたときには、
すでに立ち入り禁止表示テープは切られたあとだった。
そして、その向こうの、
ぬかるんだ土の上には、
5人分ぐらいの足跡が三角屋根のマリーちゃんの家の玄関へ向かって、
くっきりと残っていた。
「あちゃー」
「結繪ちゃん、
まだ間に合うかもしれないですから、急ぎましょう」
確かに音音の言うとおり、
こうなると一刻を争う。
ドアをドカッと蹴り破って中に侵入する。
女の子としてはどうかと思うけど、
この場合は仕方ない…。
マリーちゃんの家は、
外から見ると結構広そうに見えたけど中は狭かった。
そこの、
まるで肉で出来ているようなぶにぶにした壁に、
5人の男女が両手を広げた格好で拘束されていた。
顔は土気色をしていて、
かなり生気を吸われている感じだ。
でもよかった、まだ息がある。
これなら助かる。
三狼が自分の背丈に近い160センチ斬馬刀を鞘から抜くと、
手近にいた女の子の戒めを切り裂いていく。
私も愛刀・小狐丸の鯉口を切り、
拘束している肉に斬りつける。
yue1.JPG
(イラスト ムシ長者さん)
音音も同じように愛刀・狐ゲ崎で肉を切り裂いていく。
すると……。
「ぐぎゃああっ!!!」
突然天井から不気味な叫び声が聞こえて、
天井いっぱいに大きな顔が現れる。
「貴様ら、何をする! 
そんなモノで切ったら口内炎になるではないかっ!」
それを聞いた音音が、
怒りを含んだ声で答える。
「どこの妖異か存じませんが、
この鎌倉府で不逞(ふてい)をはたらくなんて
良い度胸をしてらっしゃいますわ」
「早く病院にはこびたいんだから、
大人しく解放しないと、痛い目みてもらうけど…」
「ふん、小僧と小娘ふたりが凄んだところで
痒くもないわっ! ほれっ!」
そのかけ声とともに、
触手が地面や壁から生えてくる。
伸びてくる触手を切り落とすものの、
数が多すぎてきりがない。
しかも切り口からは、ねっとりとした血が流れ、
脂分が濃いのか、あっという間に刀の切れ味が悪くなってくる。
こいつ、メタボリックなんじゃ、と気を取られた隙に
調子に乗った触手に制服を切り裂かれてショーツがあらわになる。
それを見た三狼が鼻血を出して、その場でしゃがみ込んだ。

その5に続く
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「二楽亭へようこそ」その5 [小説]

第2章 その3

「あっ! 三狼こっち見るなーっ!」
そう言って怒鳴る私の横で、
音音もこっち見てはぁはぁしてるし…。
そうこれ…、
これが音音の困った趣味。
音音って、普段はクールだけど、
レズっ気があって、
ちょっとエッチなスイッチ入ると
見境なく私を襲ってくる…。
今もそんなスイッチが入ったらしく、
なんだか目つきが怪しくなってるんですけど…。
あー、もうっ!
音音がそんな困ったHモードになったのも、
みんなこの妖怪がいけないんだからねっ!
「このエッチ妖怪!! 
急いでるって言ってるでしょ!」
そう言ってるのに、大人しくなるどころか、
更に触手の数が増えて襲ってくる。
「もう! 言っても聞かないんじゃ、
しょうがないよね!」
そう声を音音に投げつけると、
はっと正気に返る。
「そうですわね」
音音と目を合わせると、
私は愛刀・小狐丸を天に向けて、
「かけまくもかしこき稲荷大神の大前に、
かしこみかしこみももうさく…」
と稲荷祝詞(のりと)を上げ始める。
音音は、愛刀・狐ガ崎を地面に向け、
「本体真如住空理……」
と稲荷心経をとなえる。
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すると中空から、
狐耳に狐のしっぽのある
ふたりの美しい巫女様が姿を現す。
ふたりは私と音音が契約する守護妖、
五尾狐の有明葛葉ねえさまと
四尾狐の阿部静葉ねえさま。
1385年に玄翁和尚が殺生石を砕き、
そのとき飛散したかけらから顕現したふたりは、
せいぜい20歳ぐらいにしか見えないけど、
ホントはもう600歳に近いらしい。
普段は西御門高校内にある
空中庭園二楽亭に住んでいて、
こんなときには力を貸してくれる。
「うー、なんですか、狢(ムジナ)臭いのです~っ!?」
出現するや、葛葉ねえさまが呻く。
「臭すぎますわ~~っ」
ふたりとも、少しでも悪臭を防ごうと、
顔の前に巫女服の裾をかざして、鼻を隠してる。
そうか、相手は狢なんだ…。
狢といえば、狸の親戚。
ウチの学校にもエロ狸がいるけど、
道理でエロい感じがすると思った。
「葛葉ねえさま、静葉ねえさま!」
「あらあら、結繪さん、
その格好はどうなさったのですか!?」
「それより、
この人達を病院に連れていきたいんですけど、
この狢が言うこと聞いてくれなくて」
と窮状を訴えると、
葛葉ねえさまと静葉ねえさまは、黙って頷いて、
「ここからは、
私たちがお相手してさしあげましょう。
あなたたちは、その間に救護を呼びなさい」
そう言って袂(たもと)から御札を取り出し、
部屋の四方に投げつけると、
何事か祭文を唱え始める。
「こ、この祭文は稲荷の…。
ぐげげげげげぇ、なんで稲荷神がここに…」
狢が驚くのには構わず、
祭文を上げつづけるふたり。
そして最後に、
「えいっ!」
とハーモニーを奏でるように
気合いを掛けると、
御札から文字がトゲのように突き出して、
辺りを貫いていく。
「ぎゃああ!!!」
あたりの肉壁が消え、
普通の林の風景に戻った。

その6に続く。
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「二楽亭へようこそ」その6 [小説]

第2章 その4

「うううう、お、お助け~~っ! 
い、いったいあんたらは…」
「だから、ここは鎌倉府で
あやかし関係の事件は、弾正府の管轄なのっ!」
私がそう怒鳴りつけると、
狢がガクガクと震え始める。
「じゃ、じゃ、じゃ、じゃあ、
あなたさまは、もしかして…」
「うん、私が弾正尹(だんじょうのかみ)那須野結繪。
こっちは弾正忠(だんじょうのちゅう)化野音音。
見知りおけ」
「はっ、はは---っ」
地面に頭を擦りつけ平身低頭する狢。
いばり返るつもりはないけど、
これだけのことをしでかした狢には
罪の重さをちゃんと実感してもらわないといけない
--と、思ってたら、
静葉ねえさまが、
「まぁまぁ結繪ちゃん、
狢さんも反省してるし、
その位で勘弁してあげてもいいんじゃない?」
と助け船を出してきた。
「その代わり、
狢さんにはちょっと
お願いしたいことがあるのですよー」
「そ、それはもう…」
「ご飯おごって▽」
「なんだ、そんなことですかい。お安いご用だ」
と言って狢は得意げに小判数枚を取り出した。

狢に生気を吸い取られた連中を
駆けつけてきた救急隊員にお願いして、
静葉ねえさまのリクエストで、
二の鳥居の側にあるウナギの名店
『浅場屋』に移動した私たち。
ここは、静岡県吉田町産の
大井川の伏流水で育てられたウナギを使っている。
狢の奢りだということで、
遠慮無くうな重と日本酒を頼んで、
葛葉ねえさまと静葉ねえさまはすっかりご満悦。
このふたり、
すごく頼りになるのはホントにありがたいんですけど、
ちょっと働いて貰うといろんなモノを大食するので、
経費もバカにならない。
とくに静葉ねえさまはうわばみなので、
飲み始めるとキリがないし…。
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(イラスト ムシ長者さん)
私と音音も1人前、
出血多量で貧血な三狼も2人前を戴く。
まあ、今回は、
狢が例の小判を古物商に売りさばいたお金で、
病院送りにした連中の入院費と
浅場屋の食事代は事足りそうで、
一応万事めでたし――。
と思った所へ、
さっきの古物商のオヤジが飛び込んで来た。
「この狢! 
葉っぱの小判出すとはふてえ野郎だ」
「え、もうバレたの?」
「バレたって、
あんた最初から騙すつもりだったの?」
「いやあ、
こっちの世界くんの200年ぶりぐらいだから、
あ、はは…は…」
アホな顔してへらへら笑ってる狢は無視して、
店の厨房の方へ向かって叫ぶ。
「すみませ~ん! 
なんか狢つるすのにいい棒ないですか?」
それを聞いて真っ青になった狢は、
「ま、まさかあっしを狢汁に……」
と言いながら私の足にすがってくる。
「仕方がないでしょ。
お代はカラダで払ってもらわないと」
身に危険を感じ、冷や汗をだらだらと流す狢に、
そこにいた全員がほほえみながら近づいていった。

結局、文無しだった狢は、
西御門学園の雑用を
4ヶ月ほど無賃で働くことになりましたとさ。

第3章 その1につづく。
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「二楽亭へようこそ」その7 [小説]

第3章 その1

『――当機はまもなく小笠原上空にさしかかります。
成田への到着時刻は――』
そのアナウンスの最中に、
突然、乗客のひとりが苦しみ始め、
CAや、たまたま乗り合わせた
医師による手当もむなしく絶命した。
医師による所見は心臓発作。
成田到着後、
空港検疫所で警視庁係官立ち会いのもとで検視を受け、
翌日、東京都監察医務院で行政解剖が行われた。
遺体と遺品は、
名乗り出てきた遺族に引き取られることになっている。
死亡した男はロシア人で、
名はレフチェンコ・スミルノフ。
遺品には、通常の着替えなどのほか、
古びた釘が1本、
クッションのしかれた箱に大切に保管されていた。
不思議に思った係官が、
受け取りに来た遺族のロシア人であろう人物に、
「立ち入ったことでなんですが、
その古い釘はなんですか?」
と訪ねたところ、
「<聖釘(せいてい)>…、
ああ、いや、思い出の釘なのですよ」
といらえがあった――。

日のあるうちは風情がある鎌倉の裏路地も
夜になると物寂しい。
特に山のきわとか、谷戸のあたりとか、
人通りの少ない場所だとちょっと不気味だ。
山の斜面にある”やぐら”など、
鎌倉時代の横穴式のお墓も点在していて、
なにか怪異に出くわしそうな雰囲気の場所も結構ある。
実際、馴れてない人や子供だと、
あやかしに行き会ったり、
狢、狸たちに化かされたりすることもある。
驚いて怪我したりという話も
ときおり聞こえてくる。
それに加えて、
最近は『鬼』まで出るようになっていた--。

私のウチに続く路は、
途中からは車も通れないような細い路地になる。
そこを、同級生の三狼と歩いている。
いつもは寮暮らしなんだけど、
ちょっと取ってきたいモノがあって
家に帰ることにしたら、
護衛代わりに連れていけと、
三狼を付けられた。
もともと家が隣同士なので、
寮に入る前は学校の行き帰りは
ふたりいっしょなことが多かったのを
なんとなく懐かしく思い出す。
子供の頃ふたりで、
夕方暗くなった路地を、
ぽつんぽつんとある街灯の明かりをたどるようにして
急いで帰ったなぁ…。
私の家は、
北鎌倉から小袋谷を通り
山崎の奥、鎌倉中央公園の先にある。
高校生になった今でも、
夜になると人通りがほとんど無くなるこの道は
かなり寂しい感じがする。
(お腹空いた~、早く帰っておかあさんのご飯食べたい~)
そんな私のささやかな希望を邪魔するように、
<びちゃ…ぐちゃ……>
という、何とも言えない下品な感じのする音が、
横手の私道の奥、
玄関灯も点けずに闇がわだかまっている場所から
かすかに聞こえてくる。
普通の人なら気がつかない程度の音だけど、
これ、たぶん『鬼』たちの咀嚼(そしゃく)音……。
何を食べてるか知らないけど、
いつ聞いても、あいつらの品のない食べ方は
耳障りなのですぐ分かる。
理性も品性も感じられないんだもん――。
音のするほうをうかがうために、
カバンから鏡を取り出す。
それを塀の角から少しだけ覗かせて、様子を探る。
141004i1 のコピー.jpg
(イラスト ムシ長者さん)
あー、やっぱいた…。


第3章 その2につづく
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