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「二楽亭へようこそ」その11 [小説]

第3章 その5

…恐る恐る振り返ると、
そこにはいつも通りの三狼が立っていた。
「さ…ぶ…ろう…、
角は……第3期だって聞いてたのに…
大丈夫…なの…?」
「うん、いつもより調子いいくらい」
「――よかった…」
思わず三狼に抱きつくと、
「わー、結繪ちゃん、ダメ、抱きついたらボク…」
と言うと三狼が慌てて私を引き離す。
でもつぎの刹那、三狼の体から、気がわき上がり、
右の額から角が生え始め、制服が破れていく。
上背は二メートルは超えているだろう。
腕も太もものように太くなっている。
三狼は完全に鬼になっていた…。
なに? いったい何が?
三狼と一緒に来ていた医部・鹿苑寺(ろくおんじ)配下の
ミニスカ看護師さんが、
こんな状況にもかかわらず、妙落ち着いていて、
「鹿苑寺先生の話だと、
興奮すると、熱で生き残ったナチュラル鬼化ウィルスが
通常の三倍頑張っちゃって、
鬼化しちゃうそうです。
鬼化した体は、
完全に三狼さんの意識制御下にあるので、
問題はないそうです」
と説明してくれた。
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「――なんだって。
だから結繪ちゃん、
もう、急に抱きついちゃダメだよ」
や――っ!! 
三狼のカワイイ声で、
いかつい鬼がしゃべってる~~っ!
「…って三狼、私に抱きつかれれて、
何コーフンしてるわけ? 
このむっつりスケベっ!!」
そう言って向こう脛(ずね)を蹴飛ばした途端、
鬼三狼は、
プシューっという音を立てて縮み始める。
「興奮状態から醒めると鬼化も解けます」
とミニスカ看護師。
「変な所で鬼化しないように気を付けないと、
大騒ぎになっちゃうよね」
あはは、と笑いながら言う三狼。
元に戻ったのはいいんだけど、
服は破けてびりびりで、
ほぼ全裸状態だった。
そこに何も知らない音音がやってきて…。
「みなさま、おはようございます。
今日も良い天気ですわね。
清々しい朝は、清々しい一日の…」
股間に揺れるアレも、
そのまま全部見えてる状態の三狼を目撃した…。
「きゃあ――!! 何なに!? 何なの!? 
三狼っ、あなた、何で全裸なのです?
さっさとその変な物をおしまいなさいっ!!!」
と絶叫しながらその場にへたりこんだ。

医部から報告では、
三狼は冷凍処置後に異常な発熱をして、
その際、
遺伝子操作されたウィルスは壊滅したらしい。
三狼の体温は一時43度にまで達したというのだ。
発熱の間、完全鬼体化したものの、
凍結処置を施すために体温を低下させると、
熱が下がるにつれ鬼化が退行し、
人間の姿に戻り、意識を取り戻したのだという。
残っているウィルスは、遺伝子操作されていない、
通常のものばかりらしい。
このプロセスが解明されれば、
一気にウィルスを壊滅できるかと思った私だけど、
通常の人では、
ウィルスが死滅する43度という体温に耐えられないらしい。
人の発熱の限度は42度。
それ以上は脳のタンパク質が焼けてしまうんだとか…。
そうなると、やっぱりこのウィルスをばらまいている連中を
捕まえるしかない。
このウィルスを扱えるということは、
当然ワクチンを完成させているはずだから――。
医部はこの遺伝子操作されたウィルスを
悪魔=「ディアボロ」と名づけた--。

(とりあえず、三狼が無事でよかった。
でも、三狼、ああ見えて、鬼化してなくても結構筋肉質で…///。
や--っ、あんな映像は記憶から消去しなきゃっ!)
「あ…男なんて…不気味な…」
呻きながら未だに目が覚めない、
音音の額の上のタオルを取り替えながら、
とにかくディアボロのワクチン作りを急がせなきゃ
と思った。

第4章へつづく
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