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二楽亭へようこそ! 「ふたりの母」 [小説]

「あら…あの子、
女の子ではないのですね?
長い髪が白い着物に映えて
すご--くかわいいですのに。
女の子ならお友達になれたでしょうに、殿方だなんて残念…」
151202j1.jpg
中等部に上がったばかりの音音が、
一瞬振り返って、
護衛のキザクラに感想を漏らした。
西御門学園の廊下ですれ違った5歳ぐらいの子は、
見た目にはかわいい女の子にしか見えなかった。
それが聞こえたのか、言われた側の男の子は顔を赤くして、
しばらく音音たちの後ろ姿を追っていたが、
校舎の奥へと走っていった。


4年後--。
「さささ、さむーいっですわわわっ…!」
結繪といっしょに
教室に入ってきた音音が叫んだ。
「き…き…き…今日は暖かくなるって
天気予報で言ってませんでした?」
相当寒いらしく、
音音は歯の根が合わず、
しゃべりながら歯のガチガチ言う音が混じる。
「東京は暖かいみたいだけど…」
結繪がスマホの天気予報を見ながら言ううちに、
窓の外の風景が雪交じりになりはじめた。
「わー雪だー!」
喜ぶ結繪をあざ笑うかのように、
その雪が見る間に横殴りの吹雪に変わっていく。
「寒いとはいえ、
さっきまで晴れていましたのに…」
「すごーいっ! 
こんないっぱいの雪初めて!」
雪というと、
もの凄く降っても、
せいぜい30センチという鎌倉育ちの結繪が、
大量の雪があっという間に積もっていくのが
楽しいらしく、
自分の席でじっと外を見ていた
幼馴染みの三峯三狼(みつみねさぶろう)に、
「サブちゃん、雪合戦しよう!」
と言うと、
腕を掴んで校庭に連れだそうとする。
「ゆ、結繪ちゃん--こ、これ、
普通の雪じゃないですわわわわわわ…」
ガチガチと歯を馴らしながら音音が呟くと同時に、
ピンポーンと緊急放送を告げるチャイムが鳴った。
『那須野結繪さん、化野音音さん、
至急生徒会室までおいでください』
「ややや、やっぱり妖(あやかし)絡みですわわわ…」
鎌倉府の妖怪関連事件を取り締まる弾正台のTOPを務める弾正結繪と、
それ補佐する弾正忠(だんじょうのちゅう)音音が
生徒会に呼び出されたということは、
間違いなく妖がらみで面倒が起こっているとみて間違いない。

つづく
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