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「二楽亭へようこそ」その3 [小説]

第二章 その1

20××年――。
多くの古刹や由緒ある神社が点在し、
関東の小京都といわれる古都鎌倉。
歴史のある街だけに、
曰く付きな場所は沢山ある。
ところがそんな場所以外でも、
幽霊やあやかしを見たとか、
不思議な現象が起きたとか、
そんな噂は日常茶飯事で引きもきらないし、
また実際に怪現象はおきる。
だけど、歴史があるから怪異が起こるわけじゃないの。
そんな現象の原因は、
政府の直轄領・鎌倉府の北東部
=丑虎(うしとら)に位置する
西御門という場所近くに、
異界に通じる入り口があるのが原因。
でもこれは、
普通の人にはほとんど知られてなくて…。

幼稚舎から大学までの
一貫教育で知られる
神奈川県鎌倉府立西御門学園――。
その中央に位置する高等部の建物は
今時珍しい木造の建築物。
お昼を告げるチャイムが鳴り、
授業を切り上げて先生が出て行った。
幼なじみで従姉妹で親友でクラスメイトの
化野音音(あだしのねね)が、
いっしょにお昼を食べようと、
お弁当を持って私の机のほうへやってくる。
音音は、身長は150センチぐらい。
柔らかそうな髪をてっぺんでまとめいる。
同性の私から見ても、かわいいと思う。
nr1.JPG
(イラスト ムシ長者さん)
(これで変な趣味さえなければ言うことないんだけど…)
何となくそんなことを思って
苦笑する私に、
「どうかなさいまして?」
と聞いてくる。
「何となく笑いたかっただけ」
私がそう答える間に、
音音は、私の前に座っている子に席を替わって貰うと
その席に腰かけた。
「そういう気分のときもありますわね」
私の答えに納得したのか、
音音はお弁当の包みを開きはじめる。

音音と
たわいもない話しをしながら、
お弁当を食べていると、
<♪ちゃららん>
と、携帯メールの着信音。音音のだ。
ほぼ同時に私のにも着信音が鳴った。
<♪ちゃるるん>
私が携帯を開く横で、
一足さきにメールを見終わった音音が、
「結繪ちゃん、
マリーちゃんの家がまた建てられたらしいですわ」
「えぇ? またぁ?」
私のメールもおんなじ内容たった。
音音のメールも私のメールも、
発信源は、
いまや鎌倉府の住民の
必需アイテムになりつつある
同じ鎌倉府防災メール。
鎌倉府の怪異に備えて、
事件などが起きれば直ちに
配信されてくるようになってる。
“マリーちゃんの家”といえば、
確か私が小学校のころから、
合計3回は建てられてると思う。
有名な都市伝説だから、知ってるも多いと思うけど、
魔法を使うことで有名なマリーちゃんの家が、
鎌倉府の山の上にひっそりと立っているという噂話。
じつはあれ、都市伝説じゃなくて、
ホントに時々建つ。
「まだ、こんな古くさい手を使うヤツがいるなんて驚きですわ」
「でもほっとけないし…放課後行く?」
「みんな忙しいから、仕方ないですわね」
鎌倉のジモティなら、
こんなモノには引っかからないけど、
観光客とかが
時々現地に見に行っちゃうから
少し心配なんだよね。
なんで私がこんな心配してるのかというと、
ウチの学園はちょっと特殊な事情があって、
これまたちょっと特殊な自治体鎌倉府の
神霊・あやかし関係の警察業務を行う弾正府を兼ねてる。
私と音音も弾正府の一員なので、
こういう事件があれば、
対応しないといけないんだけど…。
でも、立ち入り禁止表示テープは張り巡らしたって
メールに書いてあったから、
平日で観光客も少ないことだし、
あと3時間ぐらいは大丈夫でしょ?
授業が終わってから急いでいけばいいよね。

……なんて考えていた私たちが甘かったみたい…。

その4に続く
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moe

CANDyさん こんばんは♪
nice! &読んでくださってありがとうございます。
by moe (2010-04-29 22:39) 

moe

K-STYLEさん こんにちは。
nice! ありがとうございます。
by moe (2010-08-30 09:25) 

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