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二楽亭へようこそ!「されどバナナ、なれどバナナ」 その4 [小説]

「悪い冗談はおよしなさい!」
と音音が言うやいなや、
ボディーガードの河童たちの指先から、
アーモンドやピスタチオ、落花生なとが
メイドに向かって一斉に飛んでいき、
ビシビシと命中する。
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「痛っ! 痛たたっ!」
ボンっと煙ったかと思うと、
そこにはメイドの姿は無く、うっそりと狢(ムジナ)が立っていた。
「ひでえな、かわいい冗談じゃないですか?
だいたいそれが危険な潜入捜査に挑む俺様に対する仕打ちですかい?」
「やかましいっ!
とっとと報告しないと、狢汁にしちまうぞ!」
普段から折り合いの悪いキザクラが、
ペティナイフに手を伸ばすのを見て貉が勢いよくしゃべり始めた。
「わわっ、今回の件、
禁断バナナは関わってないと思いやす。
今は儲かってますけど、
借金がすごくて、
クラークは返済にキューキューしてやすから」
「新宿辺りのいい借金弁護士を紹介してやろうか?」
「100万円返ってきたら家族のために使えるぞ!」
口々にまぜっかえす河童たちをよそに、
腕組みした音音が
「で? その借金先はどこ?」
と真顔で聞くと、
「それはまだ…さすがに帳簿関係は
ガードが厳しくて…引き続き調査を続行しやす」
そう神妙な顔で答えた狢は、煙とともに姿を消した。
「--となると、
なんとかして糖度20以上のバナナを手に入れないと…」
「――そうだ、バナナと言えば、
伊豆のわななバニ園にならあるかもしれない」
誰かが思い出したように言うと、
音音がすかさず反応した。
「オオゼキ、何人か連れて行っていいから、
当たってちょうだい」
「当日、20本あれば、
規定の50皿を作ることが可能です」
調理担当の桜花から必要な本数教えられると、
「合点承知の助だ」
と言ったオオゼキがばたばたと出て行った。
それを見送った音音たちも動き出す。
「こちらも大船の植物園など、
ありそうな場所を手分けしてあたってみましょう」

つづく
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