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二楽亭へようこそ! 「ふたりの母」その3 [小説]

音音が武道棟の入り口に着くと、
結繪が刀をふたふり、
<小狐丸>と<狐が崎>を持って出てきたところだった。
「はい」
と結繪が音音の愛刀・狐が崎を渡すと、
結繪のスマホが鳴り始めた。
「Qちゃんからだ…んーと--
<美術室に入った> --だって、いくよ音音」
画面の内容を伝えた結繪が走りだすと
音音は化野家専用秘密回線をそっとオンにして、
「対象は美術室、妨害よろしく」
と小声でつぶやいてそのあとを追った。

校舎に戻ろうと昇降口に行くと、
何故かドアが閉まっていて、
開けようとしても鍵がかかっているようで開かない。
仕方なく裏に回るとそちらも閉まっている。
「これって…雪女の仕業なのかな…?」
(ナイスですわキザクラ!
いまのウチに雪女を確保するのですわっ!)
「窓ガラス割って入ろう」
そう言って、
結繪が愛刀小狐丸の鯉口を切るのを音音が止めた。
スマホを取り出しながら、
「昨今ガラス代も馬鹿になりませんので、
サブを呼んで開けさせますわ--あ、サブ?
校舎の玄関の戸に鍵がかかってて入れないから開けて」
自分の要件を言い終わると、
三狼の返事も聞かずにさっさと電話を切ってしまった。
しばらくして、鉄製の扉の向こうで、
ガーンという音がして、
ゆっくりと扉が開いた。
「鍵がひん曲がってた…」
ぼそっと三狼がつぶやくのを聞きながら中に入ると、
「美術室の方に雪女がいるらしいの。
確保するから、三狼もいっしょにきて」
と言って結繪が走りだした。
美術室のある3階に着くと、
あたりの壁や天上には霜がはり、
床は氷ついて滑りやすくなっている。
「転ばないように、
足全体に体重をかけるといいのですわ」
と音音が言うそばから、
結繪が滑ってバランスを崩した。
それを後ろか抱きとめた音音--。
結繪を愛してやまない音音が、
鼻孔をくすぐる甘いシャンプーの香りをかいで、
しあわせそうにうっとりとしている。
ちょっとわたわたした結繪は、
三狼の手を掴んでバランスを立て直して、
「ありがと」
と言うと3階の美術室を目指して
階段を軽やかに駆け上がっていく。
階下に取り残された音音の瞳に、
一瞬スカートが翻り、
白いショーツがチラリと映った。
160110i1-2.jpg
「はわわ~…が、眼福ですわ~」
思わぬ収穫にめまいがしそうになるのを何とか抑えて、
音音もふたりの後を追った。

つづく
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