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「二楽亭へようこそ」 その50 第6話「-暗闘-青木ヶ原樹海」第3章 その6 [小説]

「ほれ、かの鬼の魂魄は消滅したぞ」
鬼裂丸がそう言うのを聞きながら、
呆然とヤンの居なくなった空間を見詰めていた私たちに、
「刀を地面に置いてください」
と殺鬼丸が声をかけてくる。
言われた通り刀をおくと、
見る間に女性の姿に変わっていく。
「刀のままではしゃべり辛い。
そなたらもこの方が話しやすかろう?」
きさき.JPG
栗色の入った長い髪に
少し潤んだ瞳が印象的な長身の女性が、
「鬼を裂くと書いて鬼裂丸じゃ。きさきと呼んでよいぞ」
と言った後、
「こなたが妹の殺鬼丸じゃ。殺す鬼と書く。
さつきと呼ぶがよい」
「よろしくお願いいたします」
紹介されてそうお辞儀をする殺鬼は
長い黒髪にくりくりした瞳に麻呂眉が可愛い感じの女の子。
さつき.JPG
なぜかふたりは私たちと同じ西御門学園高等部の制服を着ていた。
「我らも宝物殿の中はもう飽いた。
そなたらに力を貸すゆえ同道してたも。
悪い話ではあるまい、のう弾正尹殿?」
「でも宝物殿にちゃんと返さないと…」
「レプリカが置いてありますから、
大丈夫ですわ。ですから、ね、結繪ちゃん--」
「弾正忠殿は話がわかるのう」
「いえいえ鬼裂さんこそ」
「ホーッホッホッ--」
ふたりで口に手を当てて笑う姿は
絵に描いたようなワルだ。
この笑い方が素で似合うふたりと言うのも
なかなか怖い…。 
思わずため息をつくと、期せずして隣からも
ため息が聞こえてくる。
横を見ると妹の殺鬼丸と目が会った。
はっとした彼女が、
「あんな性格ですが、根は優しいのです。
どうか姉をよろしくお願いいたします」
と挨拶してくる。姉と違っていい子だ。
さっきは一瞬音音が鬼裂を使った方がいいかとも思ったけど、
やっぱり私が鬼裂を使おう。
「あ、こちらこそ。
音音、イケイケでちょっと変態入ってるけど、
うまく押さえてね」
殺鬼丸とは良い友達になれそうだと思った。

第4章につづく
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