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「二楽亭へようこそ」その31 第3話「瑞葉がきた日」その1 [小説]

その1

むかしむかし、那須野というところに、
瘴気(しょうき)で近づくものを殺してしまう殺生石という石がありました。
その石は僧・玄翁により砕かれ…。
という話は前にもしたと思うけど、
玄翁和尚に砕かれた殺生石の欠片がどうなったというと……。

殺生石の飛び散ったパーツは、
全国各地に散らばったらしいんだけど、その数は定かじゃない。
その中でも、割と大きかったふたつの石が、
葛葉と静葉という狐の子に生まれ変わっていた。
葛葉と静葉は、それぞれ人に育てられ、
母・玉藻の前の生涯を知っても人を恨まず、
人との共存を願った。
一方、いろんな場面で対立していたあやかしと人は、
玉藻の前の事件があって、
対立に終止符を打とうと、
朝廷の命を受けた陰陽寮と神狐を中心とした有力なあやかしが手を組み、
紳士協定を結んだ。
そしてその協定を守るための組織・弾正府をつくり、
そのときあやかし側からの人事に抜擢されたのが、
葛葉、静葉、あの狐のあやかしだった。
葛葉と静葉の姉妹は、
それぞれ子狐丸、狐ケ崎という名前の刀に封じられ、
代々の弾正府長官・弾正尹(かみ)と
次官弾正忠(だんじょうのちゅう)の守り神となった。

で、現在。
弾正尹(だんじょうのかみ)の私、那須野結繪(なすのゆえ)と
弾正忠・化野音音(だんじょうのちゅう・あだしのねね)は
結構な大ピンチに陥っていた。
結繪ピンチ.jpg
というのも、今、私たちの目の前にいるのは、
どう見ても落ち武者の群れってやつで…。
そいつらが、手に手に槍とか刀とかを持って、
隊列を組んでじりじりとこちらに近づいてくる…。
私は愛刀・子狐丸でそいつらをけん制しながら、
傍(かたわ)らにいる音音に尋ねてみる。
「ちょっと音音(ねね)っ! 
いつまで我慢すればいいのっ!?」
「結繪ちゃん、もうちょっとだけ我慢してくださいませ」
そりゃがんばれるだけがんばるけど、
早くしてくれないと、
私たち、あちこち服が破れてかなりセクシーなことに
なっちゃってるんですけど…。

その32につづく
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