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「二楽亭へようこそ」その9 [小説]

第3章 その3

私を助けようと、
三狼が木刀で殴りかかるけど、
その木刀をへし折りながら、
三狼を道にそそり立つ竹矢来(たけやらい)に吹き飛ばす。
バキバキと竹の折れる音とともに
竹矢来がなぎ倒される。
「三狼―っ!」
メチャメチャに折れた竹の間で、
起き上がろうともがく三狼だけど、
上手く起き上がれない。
脇を押さえてるから、きっと肋骨が折れてる…。
三狼に気を取られた瞬間、
鬼の殺気が私に向かってくるのを感じた!
(やられるっ!!)
そう思って目を瞑(つぶ)る私に、
「待たせたなっ!」
という頼もしい声が降ってきた。
刀身が180センチもある六尺斬馬刀(ざんばとう)の峰で、
鬼の一撃を防いで立っているのは、
私の憧れの人、
狼部筆頭(ろうぶひっとう)三峯二狼にいさまぁっ!
きゃーん、いつ見てもカッコイイよぉ!!
「あ、ありがとうございます!!」
「弾正様、お怪我は? 
なさそうですね。あとは私にお任せを」
そういうと、私に上着をくれると、
軽く鬼あしらい、みぞおちに一撃をくらわせる。
動きが鈍った隙に、
力封じの札を額に貼り付ける。
ほんの一瞬の出来事。
「にいさま、ありがとう。
でも、弾正様はやめてって言ってるでしょ?」
貸してもらった上着で
破れたスカートをフォローしながら話しかける。
「我ら狼部は弾正様に仕える身。
いくら幼い頃からの知己とはいえ、
例外を作ることは許されません。
とくに人前では…」
ひさしぶりに二狼にいさまとお話できそう――
って思ったら、
「痛っ―――っ!」
という絶叫。
振り向くと、
三狼が救急部隊の担架に乗せられてるとこだった。
って私、一瞬三狼のこと忘れてたよ…。
同じ兄弟なのに、
どうしてこんなに二狼にいさまと違うんだろう?? 
そう思っても、幼なじみだし、
放っとけないよね。
「二狼にいさま、私、三狼についてくね」
「申し訳ありませんが、
こちらの検分などありますので、
そうしていただけると助かります」
「上着ありがと。明日学校で返すから~」
そう言うと救急車に乗り込んだ。

救急車の中で気を失った三狼。
病院で検査すると、肋骨2本が折れていて、
そのまま入院することになった。
三狼のお姉さん、
三峯家の長女、一子(いちこ)ねえが来るというので、
それまで病室にいることにした。
三狼ってば、
相手が鬼とはいえ、
狼部の人間が一発殴られただけで
肋骨2本はいかんだろ?
寝ている三狼の前髪をたくし上げてみる。
こんなに二狼にいさまに似てるのに…。
「このばかちん。
…でも、ごめんね、独断で動いた私のせいだ…」
そのときコンコンとドアをノックする音がして、
一子ねえが入ってきた。
一子.JPG
「結繪ちゃん、ありがとね」
「いいえ」
「コイツ、もともと丈夫じゃないとはいえ、
肋骨2本で気絶とはね…」
「でも、肋骨にヒビが入ると息するのも大変だって…」
「三狼も、三峯家の末弟でさえなければね…」
「………」
「我ら狼部、
武をもって結繪ちゃんに仕えるもの。
十三部衆最強でなければならないの。
だから…」
「でも三狼にだって良いトコはあるんだよ」
「ありがとね。
今日はもう遅いから。
部下に送らせるね」

第3章 その4へつづく
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moe

かっぱさん おはようございます。
nice! ありがとうございます。
by moe (2010-09-08 06:27) 

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