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いよいよ開幕なのです「二楽亭へようこそ」その1♪ [小説]

お正月に予告した
久世ねえさまの書き下ろし学園伝奇小説
「二楽亭へようこそ」の連載スタートなのです。
久世ねえさま、
「ブログは苦手…」と言うことで、
ページの管理は私、桂木 萌が行っているのです。
「感想やリクエストなどいただけるとうれしい…」
と、久世ねえさまも申しております。
よろしくお願いするのです♪

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序章

『むかしむかし、那須野というところに、
立ち昇る瘴気(しょうき)で近づくものを殺してしまう
殺生石という石がありました。
もともとその石は、
かの昔、朝廷に悪事をなした
九尾の狐・玉藻(たまも)の前が退治されたときにできたものでした。
その殺生石の話を聞いた、ときの帝が
僧・玄翁(げんのう)を遣わし、
殺生石を砕かせ、
それ以降、瘴気で生き物が死ぬことはなくなったといいます----』
これが普通知られている、
九尾の狐・玉藻の前と殺生石のお話。
だけど、そのお話には続きがあって…。

第一話 「凍結する西御門 襲来! 第二契約者」
第一章

紹和20年3月31日――。

『――大本営発表。硫黄島守備隊ヨリ、
戦局ツヒニ最後ノ関頭ニ直面シ、
本日夜半ヲ期シ、最高指導官ヲ陣頭ニ
皇国ノ必勝ト安泰トヲ祈念シツツ、
全員壮烈ナル総攻撃ヲ敢行ス、
トノ打電アリ。
通爾後、硫黄島守備隊ヨリノ通信ハ絶エ……』
薄暗い部屋に、
ザザッというノイズ混じりのラジオからの声が、
日本の苦しい戦況を伝えている。
ゆらゆらと揺れる、部屋の四方に灯る百目ろうそくの光のなか、
平安時代の貴族のような束帯(そくたい)姿の男達が
ボソボソと会話を続けている。
「硫黄島も落ちたか」
「此度は、第二契約者どもの思惑に、
大和人がのせられた格好だが…」
「のらずとも、唯一の神を押し立てて、
ごり押しで乗り込んで来ていたであろうよ」
口の端に皮肉な笑みを、
扇で隠すようにしながら男は話しを続ける。
「このあとは、米軍の動きに呼応して、
日ノ本に入り込んでいる契約者の先兵どもが、
鎌倉府を攻めるでしょうなぁ」
「現世(うつしよ)はいたしかたなし…。
人間世界を盾に幽世(かくりよ)を死守し、
何時の日か、日ノ本の精神を復興すべし」
「結局は“鎖国”しかあるまい…」
男たちは目配せして頷きあうと、
ゆらゆらと立ち上がりながら足元から消えはじめる。
「ことは決した…」
「ではこの後は、現世の世事は狐の姫たちにおまかせしましょうぞ」
「しましょうぞ…」
それを合図に、ろうそくの灯りがスッと消え、
部屋は闇に閉ざされる。


同年同日・鎌倉・西御門――。
うちっぱなしのコンクリートの部屋には
通信機器が多数備え付けてある。
その機器の前に座るオペレーターたちは、
詰襟(つめえり)の学生服と、
セーラー服を着た高校生の男女。
彼らはひっきりなしに入る通信への対応に追われている。
その中の一人が、
はじかれたように立ち上がると、
振り向いて声を張り上げる。
「申し上げますっ! 
い、稲村ヶ崎最終結界が突破されましたっ!!!」
「何っ! ば、ばかな…。新田義貞に破られて以来、
強化し続けてきた結界だぞっ!」
部屋の中に動揺が走る。
「極楽寺に展開中の部隊を長谷寺まで下げろ!」
すかさずそう指示を出し、動揺を抑えたのは、
大きな兵棋(へいき)演習用の机の前に立っている
白い学ランを着た学生たちだった。
しかしそのあとも、
状況の悪化を知らせる情報が続々ともたらされる。
「坂ノ下、鷲部司(わしのべのつかさ)
鷲観(わしみ)伝十郎様お討ち死! 
鷲部も被害甚大です!」
「狼部(ろうぶ)はどうしたっ!?」
「下馬四ツに部隊再集結中です。
現在、狼部司(ろうぶのつかさ)
三峯弦一狼(みつみねげんいちろう)殿のみ、
湘南海岸道路より坂の下へ先行中!」
「頼むぞ、弦一狼…」
白い学ランを着た中で、
ただひとり学帽をかぶっていた学生が、
机上の地図を睨みながらつぶやいた。

その2に続く。
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登場人物紹介(途中)>< [小説]

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結.JPG
弾正尹 那須野結繪
(だんじょうのかみ なすのゆえ)
鎌倉府立西御門学園1年生。
異界との特異点が存在する
朝廷直轄の鎌倉府の治安維持のため、
学園内に設けられた弾正府の筆頭。
暫馬刀を操る狼部など
十三部集と呼ばれる対妖(あやかし)用
武装組織を配下に持つ。
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弾正忠 化野音音
(だんじょうのちゅう あだしのねね)
弾正府ナンバー2。
代々、本家筋の化野家から弾正尹を排出していたが、
当代は結繪のサポートに回ることになった。
子供時代のある出来事がきっかけで
「結繪はオレの嫁」と固く心に誓っている。
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有明葛葉
(ありあけくずは)
五本の尾を持つ狐の化精。
砕かれた殺生石の欠片から生まれた
白面金毛九尾の狐玉藻御前の娘。
上総国の住人有明大所(ありあけだいしょ)に拾われる。
人との共存を願い、弾正台に招聘(しょうへい)され、
名刀小狐丸に封ぜられる。
以後、代々弾正尹を守護。
静.JPG
阿部静葉
(あべしずは)
四本の尾を持つ狐の化精。
砕かれた殺生石の欠片から生まれた
白面金毛九尾の狐玉藻御前の娘で葛葉の妹。
鎌倉山内の住人で安倍有世の庶子阿部有泰に拾われ、
土御門家との関係を強める。
弾正府へ招聘され、姉葛葉と出会い、
名刀狐ガ崎に封ぜられる。
以後、弾正尹を補佐する弾正忠を守護。
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桂木少尉萌
(かつらぎのしょういもえ)
県立稲村ヶ崎高等学校1年生。
民主武家政権により弾正府監視のために
高校内にもうけられた検非違使へ配属された。
普段は大人しいが切れると見境がないため
「稲村のアンバランスサーカス」の異名を持つ。

桂木瑞葉
(かつらぎみずは)
一本の尾を持つ狐の化精。
砕かれた殺生石の欠片から生まれた
白面金毛九尾の狐玉藻御前の娘で葛葉と静葉の妹。
欠片の大きさが充分でなかったため、先日顕現したばかりだが、
怨霊の実体化を簡単にこなしてみせるなど、ポテンシャルは高い。
現在、修行を兼ねて、検非違使・桂木萌の元で生活中。

十三部集
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鳩部司・宮本鳩太郎
(きゅうぶのつかさ・みやもときゅうたろう)
西御門学園3年生。
生徒会長として生徒会を率いる弾正府の頭脳。


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狼部・三峰一子
(ろうぶ・みつみねいちこ)
西御門学園2年生。三峰家長女。
女子剣道部主将。公正無私な優しいおねえさん。

蜂牛改.jpg
牛部司・大黒璃緒
(うしのべのつかさ・おおぐろりお)
相撲部を率いる巨乳美人なメガネっ娘。 


蜂部司・二荒大己
(ほうぶのつかさ・ふたらたいき)
槍術部を率いる運動神経抜群のツンデレ少女。

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大原鬼裂丸          
(おおはらきさきまる)    
伯耆(ほうき)の国の刀工大原安綱(やすつな)が作り出した刀の精。
妹・殺鬼丸とともに、鶴ケ岡宝物館に所蔵されていた。
派手好きだが、ポーカーフェイスで交渉上手。

大原殺鬼丸
(おおはらさつきまる)
伯耆(ほうき)の国の刀工大原安綱(やすつな)が作り出した刀の精。
渡辺綱が京都・一条戻橋で鬼・茨木童子の腕を斬った鬼切は末の妹。
地味で姉の影に隠れることが多いが、切れ味は姉鬼裂を上回る。
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